徴兵制 復活?−1時間目 序章・歴史編−
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「始まり始まり〜♪」
「・・・さて、皆揃ったようだな。それでは補習授業を開始する」
「その前に質問があります。
貴方は生徒会長と言えど一介の高校生。なのになぜ、先生の真似事をしているのです?」
「ふむ。納得がいかないのももっともかもしれない。しかしこれは大人の事情と言うモノなのだよ。
君も大人になればわかる。
それに隣を見て見たまえ。どう見ても高校生とは思えない大人が授業を受けに来ているではないか」
「・・・ま、まぁ、知り合いになら25歳現役女子高生
というのが居ないわけでもないんだけど・・・」
「実は・・・・・この授業を担当する筈の教官の方が倒れてしまったのです。それでしょうがなく生徒会で・・・・・」
「なんでも、教え子を戦場に行かせるわけにはいかない!と叫びながら、口から泡を吹いて倒れたそうだ。
全く、不可解なこともあるものだね。おかげで私が出張る羽目になったよ」
「はぁ・・・何となく事情はわかりましたが・・・口から泡?一体何故そのような羽目に?」
「いわゆる、火病って奴?」
「その辺りは授業を受けていくうちに理解出来るだろう。
まず最初に結論を言う事にする。
現代の軍隊は志願制であり、徴兵制は必要が無い。
日本で徴兵制が復活する可能性を心配する事は杞憂と言える。生徒が将来戦場に征くとしたらそれは個人の自由意志であり、教師が関与する事ではない。
つまり先ほど話題になった教師の雄叫びは意に介す必要性を全く感じない」
「うわ、ちょっと・・・いきなり結論から入っちゃって、それじゃ身も蓋も無いんじゃ?」
「ちょっとでも軍事的知識を得ていたら最早常識ですらあるのだがね、ここでは軍事に興味が無い人を対象に簡単に分かり易く解説するのが目的だ。君は既に理解していたのかね?」
「特に詳しいわけじゃないけど・・・アメリカもイギリスも今じゃ軍隊は志願制だって事くらいは知ってるわよ」
「エッ? そうだったんですか・・・」
「・・・このように、基本事項すら知らない者も居る。故にこの授業を行う必要があるのだよ」
国民皆兵という理念に基いた徴兵制は近代国家の原点と言えるだろう。だが、現代の軍隊には必ずしも必要なものでは無くなりつつあるのだ。
・・・それに、裏を返せば近代になるまで徴兵制という制度は久しく存在して無かったのだよ、特にヨーロッパに置いては、ね」
「ヨーロッパは長い間、軍隊の主力は傭兵だった。騎士にしても傭兵にしても職業軍人よね」
「ギリシア、ローマ文明の頃までは市民からの徴兵が主力だったのだが、両文明とも次第に傭兵を用いるようになっていった。
何故かと言うと、徴兵を止めたかったからだ。ローマ市民は納税と兵役の義務から解放され、軍団は市民からの自発的志願者と外人部隊で構成されるようになっていった。
それでも依然として表面的には兵役の義務は残っていたものの、実際には軍団の補充は可能な限り募集によって済まされたのだ。1世紀から3世紀の間にこの転換はほぼ完了していった。
軍団に入って除隊すればローマ市民権が与えられる。優秀な志願兵は集まり、軍団は強力なものになった。都市生活者よりも屈強な田舎者の方が当然、強い。
このシステムの問題は・・・拡大を続けなければいつか破綻する点だ。故に帝国は肥大化していく」
「紀元前5世紀に王を追放して元老院による共和制に移行したローマは・・・・・
アウグストゥス帝ことオクタヴィアヌスの登場により実質的な帝政へと移行します。これが紀元前27年頃の事です。
元老院には共和制を尊重すると言い訳しながら権力を掌握していったので、どの辺りから移行したとは言い切れないのですが」
「兵役どころか納税の義務まで免除? 一体それでどうやって国を維持したのです?」
「それは属州から富を徴収して体制を維持した。単純な事に。
ローマ市民に払う義務があったのは時代によって違うが、相続税(5%)、消費税(1%)、それに公衆便所使用料くらいで
属州民に課せられた租税は免除された。他には、交易をするには関税や通行税も払わないといけないが」
「兵役も納税も免除され、食と見世物(にばかり興味を注ぐローマ市民は娯楽を求め、
血生臭いコロッセウムでの奴隷同士、或いは人間対猛獣による死闘に拍手喝采を挙げる・・・
これぞパックス・ロマーナ(ローマによる平和)って奴よね。市民は平和を謳歌していたのよ」
「そんなのは平和とは言えない気がします・・・」
「平和とは戦争ではない状態を指す。少なくともローマ市民は平和を満喫していた」
「なんだか、今のアメリカを見ているようでもあるわね〜」
「歴史は繰り返す至極名言だね。
だからアメリカもローマのように衰退する日も来るのだ、と声高に主張する者も居るが、そんなのは当たり前の事だ。
いつかアメリカは衰退する、という類の主張はいつか人間は死にますと主張するようなもので、真面目に聞くだけ時間の無駄とすら言える」
「そこまで言うか」
「それにローマ帝国を基準とするなら、帝国はこの状態での繁栄を400年間も維持している。つまりアメリカはローマ帝国のようにいつか滅びるのだ、という主張は
裏を返せばアメリカの繁栄はローマのように数百年続くという主張となるね。
それにローマ帝国もその永い繁栄の中で全く波風が立たなかったという訳でもない。アメリカのこれからもそうだろう。
つまりローマのように滅ぶぞ〜滅ぶぞ〜と煽る行為は、歴史と言うモノを知らない説得力に欠けるプロパガンダに他ならない」
「アメリカが世界の覇権を握ったのがどの時点からと考えるかで基準は異なりますが・・・・・21世紀初頭の現時点においてアメリカの繁栄の歴史は、
イギリスの衰退が見え始めてきた第1次世界大戦後からだとすると90年ほど経過
イギリスが植民地を失い、衰退が決定的となった第2次世界大戦後とすると60年ほど経過
ソビエト連邦が崩壊し、パックス・アメリカーナがほぼ完全に成立したといえる東西冷戦が終結した時点から計算すると・・・・・10年ほど経過しています」
「歴史の浅い新興帝国アメリカの時代は、実はまだ始まったばかり・・・」
「全く・・・身も蓋も無いですね」
「私は特にアメリカが好きと言うわけではないよ、ただ徹底した現実主義者であるだけなのだ。
だから断言する。アメリカをローマ帝国と重ね合わせるのは自爆行為に等しいので止めておきなさい。勿論、私はアメリカの繁栄が数百年続くと言っている訳ではない。
ローマ帝国を引き合いに出すなら、そういう結論になると言っているだけだ」
「歴史は繰り返すのよ。
そしてプロイセンの鉄血宰相はこんな事を言っているわ。
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「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
オットー・フォン・ビスマルク(1815〜1898)
「まさしく賢者とはかくあるべきかな? 歴史を理解することは“他人の”経験から学ぶという事。
愚者は自ら経験した事からしか学習しないが、賢者は他人の経験(人類の歴史)から学ぶ。
つまり愚かな失敗を繰り返さない為の教材でもあるのだね、歴史とは」
「では何故・・・・・人は同じ間違いを繰り返し、歴史は同じような事を何度も繰り返すのでしょうか・・・・・きっと、歴史教育が行き届いていないからですね」
「その為に補習授業があるのだよ」
「ちょっと待って下さい、歴史が繰り返すというのであれば・・・
やはりいつの日か、また徴兵制が必要になることもあると言えるではないですか」
「うむ・・・その通りだ。だがその事は気にする必要が無い」
「それは一体どう言う意味・・・」
「何故ならば、今後もし徴兵制が必要となる時が来る場合、何らかの大動乱が発生する事を意味する。今までの秩序は崩壊し、国家体制は変革を余儀なくされるだろう・・・
この日本において徴兵制が復活するとしたら、内戦状態に陥っているような状況か、あるいは文明が崩壊し、歴史が後退した時か・・・
そのくらいの大惨事でも起こらない限り想像がつかない。それにどっちにしろその時になったら回避できないのであるならば、今から気に病んでもしょうがないと言えるよ」
「例えば・・・・・宇宙人が攻めてきたら徴兵制は恐らく、復活します」
「そんなの当たり前でしょーがっ!!」
「そう、当たり前の事だ。しかしいつか、〜でしょうとは、実に便利な言葉だとは思わないかね?
いつか人間は死にますと言うのと、さほど差があるとは思えない。
例え0.1%の可能性でもあるならば、百年掛かるか千年掛かるか知らないが“いつか”はその事象が発生するかもしれない・・・それは確率論的には正しい。
だが、“いつか”というのであれば一万年後でも十万年後でもそう言えてしまう。その程度の予言〜、予言にすらなってないが・・・誰でも言えるではないか、そんな事は」
「要するに、その事態がいつ起こりそうなのか、当面はどうなのか・・・これからの未来を確度の高い予測で判断する為に、その為の分析資料として歴史を、軍事を学ぶというわけね」
「そう、その通り。未来の事は正確にはわからない。分かるならばそれは人間ではない、神だ。
私は神あらぬ人の身故、100%確実な未来予測は保障できない。だが様々な資料を分析してみれば大体の予測の見当を付ける事は出来る。
今までの世界情勢から予測すると、日本では数十年どころか数百年のスパンで、徴兵制復活は有り得そうに無い。
その数値の根拠は、最終的には確かに私の感覚に過ぎない。そして貴方達はどう感じるか・・・それは、補習授業を全て受けた後に判断してもらいたい。
勿論、様々な資料を自分で見付けて来て考察するのが望ましい。ここは徴兵制について考えるキッカケであればそれで良い」
「・・・いつか、〜でしょう、確かに便利な言葉のようですね・・・」
「それって凄く便利な言葉よ〜、似非預言者や占い師の常套文句と言っても良いしね」
「では授業に戻り歴史を見てみよう。拡大し続ける事は遂に適わず、ローマ帝国は瓦解していく。
5世紀初頭に西ローマ帝国が崩壊し、東ローマ帝国も国力を失っていった。いわゆる暗黒時代の到来だ。
こうしてヨーロッパは戦乱の時代を迎える。だが興味深い事に、この時代から戦争は騎士と傭兵が主役のまま駆け巡ることになる。徴兵制が本格的に復活したのは17、18世紀まで待つ事になる」
「千年以上の間、市民は兵役とは無縁の生活を送っていました。・・・・・・戦争の被害には遭うが、加害者ではない時代です」
「社会の大変革があったのに、徴兵制にはならなかったの?」
「それにはまず、戦場の主役となっていく騎兵の存在が挙げられる。アテネやローマの市民徴兵が歩兵による密集方陣だったのは、地形的要因もあるが先ず何よりも
騎兵には特別な訓練である馬術が必要になり、市民徴兵にはそのような訓練を施すのが難しいといった側面が挙げられる。
つまり・・・職業軍人が必要とされたのだ。それは騎士であり、傭兵だった」
「ヨーロッパにおいて封建制とは・・・・・戦場の主役が歩兵から重装騎兵に移り変わった事を意味します。
これは軍事的側面から見た見地ですが、騎兵は歩兵よりも強力であるが故に騎士が必要とされ、王、領主と騎士という構造が出来あがり、共和制という概念が廃れていくのです」
「戦乱の時代の後半、歩兵で騎兵に対抗出きる戦術も編み出された。古代マケドニア式ファランクス(を改良したスイス式ファランクス戦術・・・しかし、これは傭兵達の手法だった。
そして銃火器が発達していき、騎兵は戦場の主役とは成り得なくなってくる。そして・・・ナポレオンの時代が到来する」
「面白いのは、技術力が必要とされるが故に職業軍人が望まれたと言う点ね。やっぱり今の時代とも通じる点があるのよ。
ハイテク兵器を扱う為には徴兵よりも職業軍人―これは現代における徴兵無用論の一つの根拠なんだけど、千数百年前に騎士や傭兵が使われるようになった理由と全く同じ。
当時、馬はハイテク兵器だったのだ!」
「そう、馬は現代で言う戦車や戦闘機に相当する重要な戦闘兵器だった。
古代中国ではこの様な逸話がある。篭城戦になり、食料が尽きた。しかし馬は反撃にも脱出にも必要であり、殺して食べることはできない。
そこで・・・馬は残して人間の女、子供を殺して食べた。戦闘の役に立つものが残されたと言うわけだ」
「中国といえば人肉食よね〜、人肉饅頭とかあったくらいだし、客人をもてなすのに料理の材料が無いからって、
自分の妻を料理して差し出して、それが美談になる国なのよ・・・」
「その話題は色々と問題があるので・・・・・なるべく控えてください」
「話が脱線し過ぎですっ!!」
「・・・こうして、ヨーロッパ大陸の戦場は騎士と傭兵の時代になった。市民は戦場に赴く必要は無かった。ローマ帝国の件で述べたが、為政者はなるべく市民徴兵を使いたがらず、なるべく志願兵と傭兵で済ませようとした・・・
きっと、市民が武装蜂起するのが怖かったんだろうね。
そしてローマ帝国は市民の納税すら免除していた。これでは市民革命なぞ起こるはずが無い」
「(無理矢理話を元に戻してるわね・・・泣かれたら、駄目か。人肉食話ってそんなに怖い?)
イギリスなんかは海を隔ててるから攻め込まれる心配は低いのよね。だから常備軍は小さかったし、騎士が中心で事足りた。
そして戦力整備は海軍へと向けられ・・・そして海軍こそ、専門技術である“航海技術”が必要となる職業軍人の集団だったのよ。
そして大陸に攻め込んだ事はあっても、大陸から攻め込まれたことは殆ど無いわけ」
「戦いは上に立つ者の務め。王、貴族、騎士はその為に平時から民に君臨しているのです。
戦いに敗れたら己の命を差し出す代わりに領民には危害を加えさせない。大きな権利を行使できる立場にある人は、その分だけ他人よりも重い義務を果たさなければならないということ。
しかし、そのような時代は過去のものとばかり・・・」
「ノブレス・オブリージ(Noblesse oblige)という奴ね。ヨーロッパの慣習だけど、イギリスはそれが強く残っているの。
理由は、地理的要因から民衆を危険に晒すことが少なく、軍隊は職業軍人で構成され・・・戦争に市民徴兵を送り込むことは恥とされた。
結局、ローマ帝国と似たような理由で徴兵制は見られていたのかも・・・結局はね、権力者というものは市民徴兵に頼りたくないものなのよ、意外にも、ね」
「下手に武装蜂起されても困るからね。武器を手にした経験の無い烏合の衆なら鎮圧も容易だろう」
「やけにソレに拘るわね・・・」
「確かにイギリスには“高貴な者の義務”の精神が尊ばれる土壌が根強く残っている。フォークランド紛争でも貴族は先を争って最前線へ出征し、何人もが帰らなかった。
なにしろ行かなかったら貴族社会から抹殺されるからね。全ての特権を失ってしまう。一生、後ろ指を指される人生になるのだ。
他の戦争でも、イギリスはギリギリまで動員を掛けようとしないクセがある。どうにかして職業軍人と義勇兵で済ませようと模索するのだ、彼らは」
「そこで同じ島国たる日本と対比するわけなのですが・・・・・外敵に攻め込まれ難いのはやはり日本も同じです。
蒙古来襲の2回くらいが着上陸を許した本格的な敵勢力侵攻の例です。
ただ・・・・・日本の貴族の精神はイギリスとは全然違いますね。日本の貴族は戦いと言うモノを嫌い抜いていました。
自ら刀を抜いて戦うなどとんでもない。そのような汚れ仕事は、下賎な者に任せてしまえ・・・・・これが平安時代です」
「当時の日本はある意味、凄い状況よ〜。なにしろ、
常備軍廃止! 死刑制度廃止! 平和だ万歳!
・・・とゆー、なんだか知らないけれど理想郷は千年前に既に実現していたのだ!という状況。これも全て戦争嫌いの貴族達のおかげね」
「・・・そしてその治世がどのような結果を生み出したかというと・・・
死刑が無い。軍隊も無い。故に山賊、野盗の類は暴れ放題。警察は設置されたが犯罪者集団の方が強く、数も多いので取締りが効かない。
しかし貴族達は衆民の暮らしがどれほど悪くなろうと意に介さず、遊んでばかり。結果、都は死体が散乱し悪臭を放つようになった。
荒れ果てた都。しかし自分の財産を守るために貴族達は私兵を雇うようになる。つまり・・・武士だ」
「それで貴族なんですか!! どう言う国なんです、其処は!!」
「イギリスの方は怒られるかもしれませんが・・・・・これは文化の違いですよ。それにヨーロッパの貴族−騎士の関係と日本の貴族−武士の関係は違います。
日本の武士は、ヨーロッパで言えばむしろ傭兵になります」
「最終的にはそれも違ってくるが、そもそもの成り立ちは貴族に雇われた傭兵集団であることには変わりが無いね」
「千年前に成立した夢の都は、実は荒廃した死都だった・・・でもまぁ、2000年前にローマで成立した夢の都とさほど変わらないのかも。
スケールダウンして範囲が狭くなっただけで、他人の犠牲の元に成立する平和の都って意味では同じ。ローマは市民まで平和を享受できたが、平安京は貴族まで・・・」
「それにしても現代における平和運動家の思考パターンと、当時の貴族達の思考パターンが似通っているのは実に興味深い。
歴史は繰り返す。姿形を変えながら、本質は変わらない・・・」
「日本人は極端から極端に走り易い性癖がありますからね・・・・・」
「今の日本の平和運動は千年前の平安貴族と同じく、単に戦さを毛嫌いするだけの生理的嫌悪でしかない。具体的な実利を優先する欧米型反戦運動とは種類が異なる。
やってることは千年前の貴族と同じ・・・つまりこの、生理的嫌悪だけから来る反戦運動は日本の伝統行事とも言えるよ。
しかしそれは、千年来繰り返されてきた戦争と平和の螺旋なのだ。
平和な時代には徹底的にそれを追求して戦さに関わる事を回避し続けるが、それではどうしようもなくなった時には武人に国を任せ、国の局難を乗り切る。
この極端から極端への繰り返しこそが、日本史のいつものパターンだ」
「よく平和運動でいつか来た道っていうフレーズで軍国化への懸念を訴えているけれど、
実はその平和運動家自身も、見事に日本史のいつものパターンに嵌(っているわけね。
無闇に軍人を蔑み続けたら、いつかクーデターを行うかも・・・とは考えなかったのかしら?」
「考えなかった。そういう伝統・・・いや、文化だからね。実際にクーデター騒動を経験しても理解しようとしなかった。
実は大正時代末期の世界大戦の狭間は軍縮時代だったのだが・・・日本の大衆は軍人を蔑み、罵った。やれ税金泥棒だの、人殺し商売だの、と。
昭和初期、これに反発して逆に軍閥は横暴化する。いわゆる反動化という奴だね。
そして満州事件で国民意識は一気に180度転換され、軍人の時代がやってくる。その後、5・15事件や2・26事件というクーデター未遂事件まで発生し・・・更に大きな戦争へと突き進んでいった。
こういった出来事を経験しているにも関らず、敗戦後またすぐ同じように自衛隊員(軍人)を蔑んでいた風潮は、まさに日本史のいつものパターンに沿ったものだと言える」
「そして今・・・・・いつものパターンと同じく、時代の風潮は引っくり返ろうとしています」
「でも、自衛隊はあれだけ蔑まれててもクーデターだけは起こそうとしなかったのは立派よね〜、
三島由紀夫や押井守が自衛隊にクーデターをするようどれだけ煽っても、行動には移さなかったし」
「クーデターなんて、しない事が当たり前なのでは・・・」
「感情的になるな、とは言わない。感情の発露こそが運動のエネルギー源だからね。
だが、ただ毛嫌いして臭いものに蓋をするような行為はけっして上手くいかない。それは歴史が示している」
「平安時代が終わりを告げたのも・・・・・江戸時代が終わりを告げたのも・・・・・結局は、今のまま平和を満喫していたら国が滅ぶ、という危機感から時代が移り変わったのです」
「これはある種のシステムと言って良い。平和の時代から戦乱の時代へ、日本人はスイッチを切り替える様に変化し、対応してしまう。
これは海がある故に、常時には他国からの侵略の脅威が無い・・・例え攻め込まれるとわかっても時間の猶予がある・・・という理由から、この切り替えシステムは上手く機能してきた。
戦時体制への切り替えの準備に時間が掛かっても、間に合うからね。
ただ、航空機やミサイルが発達してきた現代の戦争では昔ほどに海があることの優位さは無いし、現代戦は一瞬で勝負が決まってしまう。果して、旧来からの日本のシステムは上手く機能するだろうか?」
「だから今、まさに戦時体制へ移行しつつあるんじゃないの? 今更になって核ミサイルの恐怖に怯えてね。
そして冒頭に出てきたように口から泡を吹いて倒れる教師が続出と・・・」
「そこで注意する必要がある。仮に戦時体制へと移行したとしても、それはすぐ徴兵制を意味するものではない。
それはヨーロッパで永らく騎士と傭兵の時代が続いた事からもわかる。職業軍人も市民徴兵も、それぞれの時代が必要とするのだ。だからこれからどのような時代が訪れるのか予測する必要がある」
「次の授業からは、世界大戦から現代までにおける各国の徴兵制の状況を中心に進めていく事になります・・・・・」