[PR]テレビ番組表
今夜の番組チェック



徴兵制 復活?−2時間目・ドイツの事情−







Deutschland ueber alles!!

…って、今回は出番コレだけ?」




ホームルームへ戻る







【前回の授業のあらすじ】
人類の歴史上、徴兵制は常に行われていたわけではなかった。ヨーロッパの中世を例とすると、千年以上の間、 戦争を行っていたのは職業軍人だけだった。騎士と傭兵の時代である。



 「それではようやく本編に入る事にしよう」

 「・・・あらすじ紹介、妙に短くないですか? 随分と端折はしょっているような気がします。

前回はローマ帝国や日本の平安時代の話もしていたように思うのですが」

 「ふむ。簡潔にと心掛けたのだが・・・そんなに良くなかったのかね?」

 「そう言うわけではありませんが」

 「だが君の顔は、

『敬愛する同志にして偉大なる指導者・林水会長閣下が前回の授業を見事に纏めてくださった。 私は東洋一の幸せ者だ』

などと思っている風には見えんが・・・」

 「アンタは北朝鮮の某映画ヲタクですか」



プルガサリ 「?」



 「彼の者と私を一緒にしないで欲しいな。私は自由を尊重している。ポルノ・コミックの局部描写にさえ寛容なほどだ」

 「そーいう事を、こーいう場所で言うのは迷惑ですっ!!」

 「そーよそーよ、某将軍サマや正男まさお君だって賛成してるわよ、そんな事。って言うかむしろ積極的?」

 「落ち着きたまえ。二人とも。

権力者はどうか知らないが、彼の国かのくにではそのような文化は一般大衆に開放されてはいないのだよ。

あれこそは本来、大衆文化の筈だ」

 「・・・そういう話ではなく・・・あらすじの話は何処に行ったんですか?」

 「簡潔で良いと思いますよ。・・・・・ローマ帝国とか、他の話はオマケですから」

 「オマケって、そちらの説明の方が長かったのでは?」

 「アレッ、雪だるま式に話が膨れ上がっていくのが補習授業の醍醐味でしょ?」

 「・・・あれでもかなりの部分を省いているのだよ?

ローマ帝国が滅びた理由や中世の騎士・傭兵の歴史を詳しくやっても良かったのだが、この授業は

『何故、今、徴兵制の復活を論じる事は杞憂なのか』という命題について理解する事が目的だからね。

まずは手始めに、徴兵制の無かった時代が永く続いた事もあるという事を頭に入れて貰えればよい。

それも、その時代以前に徴兵制度が定着していた時期があったにも関らず、ね。

そして徴兵制度の無かった頃の欧州は戦乱の時代だった。

つまり、戦時体制であっても必ずしも徴兵が必要と言う訳ではない事を示している」

 「・・・今にも日本で徴兵制が復活しそうだと騒いでいる人達も居るけどね。

別に戦時体制へ移行中というより、足枷を外しているだけに見えるのだけれど。

ここ数年、日本の防衛予算は下がってる一方でしょ? 近隣諸国全てが軍拡を続けているというのにね・・・」

 「憲法改正→海外派兵→徴兵制復活・・・という三段論法は説得力が無いと?」

 「憲法改正と海外派兵は繋がっているかもしれないね。でも両方とも徴兵制には直接繋がったりはしない。

それは現在の、ドイツの事情を知ればすぐに理解出来るだろう」

 「・・・・・まず最初に結論から入ると身も蓋も無いので、世界大戦後あたりから始めますね」

 「ナイスフォロー♪」

 「むぅ・・・。では、戦後の日本とドイツを見比べながら話を進めて見よう。

まず比較例として軍の呼び名を挙げてみようか。戦後の新生ドイツ軍の名称はブンデスヴェーア(Bundeswehr)で、

新生日本軍の名称は自衛隊(Japan Self-Defence Force)となっている。(警察予備隊と呼ばれていた時期もあり)

ブンデスヴェーアの意味は[Bundes;連邦の]と、[Wehr;守る]なので・・・“連邦の守り”となるね。

言葉の意味に、直接的に軍隊を表す言葉は無い。その点で日独は共通している・・・が、当然世界は両国の防衛組織を軍隊と認識している」

 「そもそも自衛隊の英訳には“Japan Self-Defence Force”と、軍隊を意味する[Force;ちから、軍隊]という単語が入ってるじゃない。

あ、ちなみにオーストラリア軍はADF(Australia Defence Force)、イスラエル軍はIDF(Israel Defence Force)と呼ばれていて、

自衛隊はJDF(Japan Defence Force)と呼ばれる事が多いわね。Self という単語は海外では省かれて無視されてしまいます」

 「国家の防衛組織に[Self-Defence]という言葉を冠する感覚が海外では理解されないよ。防衛組織が自衛するのは当たり前の事で、自衛ではなく同朋の身を守るのがその役割なのだから。

ところで[Defence Force]という言葉は直訳すれば[防衛軍]なんだが、[国防軍]と呼ぶ方が通りが良いだろうね。

なお、再軍備宣言からWWUで敗北するまでドイツ軍の呼称はヴェーアマハト(Wehrmacht)だったが、[Wehr;守る]+[Macht;力]なので英語で言う[Defence Force]と意味は全く同じで、ドイツ国防軍と呼ばれている。

再軍備宣言前、ワイマール共和国時代の軍の名称はライヒスヴェーア(Reichswehr)だった。直訳では“国家の守り” だが、この時代は共和国軍という意味で呼ばれている。

WWU後にこの言葉を用いず国を連邦と言い変えてしまったのは、ヒトラーが普段から演説でライヒス(Reichs;国家の)、ライヒスと連発していたからだろう」

 「自衛隊の略称はSDFでは無かったのですか・・・ちょっと残念です」






キ――――――――――ン




 「・・・・・それは[Super Dimension Fortress]の略では?」

 「ここで超時空要塞が来ますか」

 「ところが、自衛隊の略称はSDFだと思っている人も結構居るのだよ。ちなみに其処でキ――ンと飛んでいる奴はVF-1SではなくF-14Aなので、注意しておきたまえ」

 「結局、JDFではADFやIDFと同じで、軍隊の名称そのものではないですか」

 「そういう事だね。だから“隊”だの“軍”だの、言葉遊びをしても全く意味が無いのだよ。

典型的な例としては、コスタリカ共和国が挙げられる。あの国を軍隊の無い国だと誤解している人は未だに多い。

せめて外務省のサイトくらい見てコスタリカのデータをチェックして欲しいものだよ」

 「そのくらい私とて知っています。国境警備隊が実質は軍隊なのでしょう?」

 「あら〜残念。微妙に外れ〜」

 「エッ・・・・・・」

 「以下の資料はコスタリカとその隣国のデータです。

・・・・・中米大陸は地峡帯なので、コスタリカの場合は北にニカラグァ、南にパナマと接し、東西は海となります」




 コスタ・リカ共和国 面積 51,100km2 人口 346万人
(1)防衛予算 89百万ドル(03年)
(2)兵役 なし(1948年憲法により常設軍を禁止)
(3)兵力 8,400人(市民警備隊4,400人、国境警備隊2,000人、地方警備隊2,000人)
  (注;市民警備隊は小銃、機関銃、ロケット砲を装備する主戦力部隊)

 ニカラグァ共和国 面積 129,541km2 人口 507万人
(1)防衛予算 31百万ドル(98年)
(2)兵役 なし(チャモロ前政権が徴兵制を廃止)
(3)兵力 17,000人(陸軍15,000人、空軍1,200人、海軍800人)

 パナマ共和国 面積 75,517km2  人口 283万人
(1)防衛予算 135百万ドル(2000会計年度)
(2)兵役 なし(国防軍は1989年12月の米軍侵攻をもって解体)
(3)兵力 11,800人(国家警察隊11,000人、海上保安隊400人、航空保安隊400人)

 参考:日本外務省 2004年各国基礎資料より




 「コスタリカの防衛戦力の主力は国境警備隊ではなく、市民警備隊?

いやそれより、隣国ニカラグァの3倍の防衛予算とは・・・」

 「ちなみに2003年度の予算で統一すると、ニカラグアの防衛予算は2500万ドル程度なので・・・・・差は4倍近いです」

 「愛と平和の国コスタリカ。なかなか強そうね」

 「実は中米では軍隊を廃止した国はコスタリカの他にもある。無論、軍隊と言う名前ではないだけで戦力は保有しているが。

これはどういうことかというと・・・軍事クーデターを恐れたからだ。軍部を解体する目的で軍という組織を廃止するが、代わりの防衛戦力は用意する。

組織の名前も変わって中の人も大幅に入れ替えるが、役割は変わらない。治安維持と国防が任務となる。

・・・要するに新しく作る武装組織を、権力者の身内で固める事が目的に他ならない。あの地域に置ける軍隊廃止とはその程度の意味だ。それはコスタリカも例外ではない」

 「その意味でハイチは失敗したわね。権力にしがみつく軍部を解体する目的で国軍を解散させるも、2004年2月に旧軍派が武装蜂起。

まだ訓練が行き届いていなかった警備隊はクーデター勢力に対抗できず、革命は成功してしまった」

 「中南米ではクーデター騒動など、ある意味日常茶飯事だろうね。軍隊を廃止したコスタリカとハイチだったが、ハイチは失敗し、コスタリカは成功した」

 「結局のところ・・・・・コスタリカには軍隊が無いという主張は、日本には軍隊が無いという主張と同じようなものです。

そもそも、中米大陸最強の戦力を保有するパナマも、防衛組織は軍隊ではなく国家保安隊です」

 「身も蓋も無いですね・・・」

 「さて、だいぶ話が逸れてしまった。そろそろ本題に核心に入ろう。

戦後のドイツは日本と違いすぐに軍隊が新設され、徴兵制も敷かれる事になった。国家は東西に分断されてアメリカとソ連、二大勢力の最前線になってしまったからだ。

・・・日本も北海道の東半分がソ連に取られていたら、徴兵制が敷かれていたろうね。

90年代初頭にソビエト連邦は倒れ、東西冷戦は終結。冷戦期間中、日独は自主防衛に徹し対外戦争には参加しなかったが・・・ポスト冷戦のこの時代、まずはドイツが動き出した」

 「ドイツは二つの方向性を明確に打ち出しました。軍備縮小・徴兵制廃止国際紛争への軍事介入です」

 「は? その二つが両立するんですか?」

 「そうだ。この一見、相反するような二つの政策は両立する。ドイツ議会の会派は既に過半数が徴兵制廃止派だ。

なにしろ緑の党もこの二つの方針を支持しているくらいだからね」

 「ドイツ緑の党(Die Grunen)は1970年代末から平和、反原子力、女性解放などを強く主張し続けてきた左翼政党です。

そして徴兵制廃止と連邦軍の人員半数削減という政策を掲げる一方、1999年のユーゴ空爆へのドイツ空軍参加、2001年のアフガン対テロ戦争への陸軍参加を支持しました。

・・・・・積極的に支持したかどうかは・・・まぁ・・・賛成したことは確かですね。そしてこの方針を堅持していく事も確かです」

 「日本では反戦団体が派兵反対!徴兵制を許すな!というスローガンを掲げているのに、

ドイツでは対外派兵開始 徴兵制は廃止の方向という政策が押し進められようとしている。

そしてその政策に、今まで反戦を訴えていたリベラル政党までもが賛同している・・・こんなことが日本でも知れ渡ったら、ある意味面白そうね」

 「どう言う事なのだか、さっぱりわかりません。欧州の政治は複雑怪奇です

 「まぁ・・・・・私にはどう見ても、貴方はヨーロッパの人に見えますけれど」

 「・・・・・その点に付いてはノーコメントです。私の正体と真名は明かせません」

 「えーっと、出身地くらいなら殆どバレてたような気が・・・・」

 「ふむ。実はそれほど複雑な話でもないのだよ。

まず軍事的知識があればこれからの時代、徴兵制が必要でないと言う事は理解できる。この辺は後の授業で詳しく解説するので、ここではドイツの事情について説明しよう。

軍縮についてだが、ドイツは東西冷戦の終結により自国が最前線である悲劇から解放された。東欧諸国のNATO加盟により最前線はポーランドとバルト三国のロシア国境まで伸びたわけだ。つまり東西ドイツ国境から700km近く東に移動した事になる。 そしてこれはドイツが700kmの戦略的縦深陣地を確保したという事に等しい。NATOの盾であったドイツは、ようやく自らの盾を手に入れた。彼らには平和の配当を受け取る権利がある。

対外派兵に付いては、EU(ヨーロッパ連合)の盟主として責任を果す必要があるからだろう。それは国際的地位、発言権の向上と共にイギリス、フランスとの結び付きが強くなる効果がある。ドイツは原子力発電所を廃止したが、それはフランスの原発から電気を買えるから問題が無い。石油はイギリスの北海油田から買えば良い。核兵器に対抗するには、フランスとイギリスに頼れば良い。代償としてドイツはEUを経済力で支えてやらねばならない。

そしてドイツは積極的に派兵へと乗り出すことにした。EUの、ドイツの、既得権益を守る為に」




 独軍改編へ、介入・平和維持・後方支援の新3軍に 2004/1/17/ 読売新聞

第二次大戦後長らく、国外派兵に厳しい足かせをはめてきたドイツ軍が、全世界への展開にむけて名実とも生まれ変わることになった。全軍(現在28万5000人)を世界各地の紛争や危機に即応できる「介入軍」、平和維持を主任務とする「安定化軍」、および両軍の後方支援などを担う「支援軍」の3軍に新編成する方針を明らかにしたからだ。
第二次大戦の反省から、ドイツは1990年代半ばまで、派兵を北大西洋条約機構(NATO)域内に限定してきたが、今回の新編成で「戦後」と完全に決別することになる。
 
シュトルック国防相は昨年5月、ドイツ軍の主任務を「専守防衛」から「国際紛争への対処」に切り替える方針を示し、今月13日、その新編成を発表した。
 
独国防省などによると、介入軍は3万5000人規模の重武装部隊で、従来の陸、海、空の3軍から横断的に編成、紛争地や危機が発生した現場に、他国軍部隊とともに緊急出動する。
安定化軍は、介入軍が出動するほど緊急性の高くない「地域の安定化」が主任務。平和維持活動などは安定化軍の任務になる。7万人規模を想定しており、1万4000人ごとに部隊編成し、世界各地計5地域までの平和維持活動に同時に対応できるようにしたいという。また、支援軍は13万7000人で、両軍の後方支援を任務とするほか、兵士の訓練・育成の場ともなる。
従来の陸、海、空軍の3軍構成は残すものの、実際の運用は、新編成を主体に行われる見通しだ。
 
シュトルック国防相は「独軍の今後の展開地域は全世界になる」と語った。
 
ドイツは戦後、侵略戦争への反省とNATO加盟国の義務から、軍展開地域をNATO域内に限定してきた。アフガニスタンやバルカン半島安定化に貢献できるようになったのは、連邦憲法裁判所が1994年7月、連邦議会の事前承認を条件に派兵を認めて以来。
 
シュトルック国防相は、今回の新編成と同時に、全軍を25万人規模に削減し、装備調達費や基地の縮小によって、今後数年間で国防予算を260億ユーロ削減する方針も示した。政府の財政難が軍の縮小と改革を促しているとも言える。




 「ドイツ人はこう言うだろう。『我々の戦後は終わった』のだ、と。

勿論、彼らの介入軍とは、国連待機部隊などではない。ドイツとEUの既得権益を守る為に世界中に派遣されるのだ」

 「ドイツは本気で国際紛争に首を突っ込む気なんですね・・・」

 「って言うか、既に首突っ込みまくりだし。

ユーゴ空爆にドイツ空軍ルフトバッフェの戦闘爆撃機が参加して、コソボにはKFOR(Kosovo FORce)の一員として主力戦車レオパルト2を含む部隊を送りこみ、

アメリカ軍に協力すべくアフガニスタンに派遣したドイツ陸軍には、既に戦後初の戦死者まで出てるわよ」

 「しかし緑の党は・・・なぜ空爆に賛同を?」

 「左翼=反戦平和主義だと思っているならそれは間違いだ。社会主義だの共産主義だのに、反戦平和という文字が記述されているわけではない。

例として冷戦中の西ドイツ社会民主党SPDシュミット政権の政策を挙げてみよう。彼らはソ連軍の新型核ミサイルSS-20 SABERの脅威に対して、NATO軍へ『こちらも新型核ミサイルを西ドイツへ配備しろ!』と要求したものだった。

実際に核弾頭の弾道ミサイルパーシングU巡航ミサイルトマホークA型が西ドイツへと配備されたよ。今のドイツの左翼政党も、派兵が地域の安定=平和に繋がるから支持しているわけで別に平和が嫌いだからNATO域外派兵を支持しているわけではない。

それに反戦平和=武力行使反対、というわけでもないのが欧米の反戦運動だ。あちらでは『武器を捨てましょう!』的な運動は今や廃れてしまい、過去の物となっている。運動を盛り上げる為にはキチンとした説得力が要求されるのだ。

故に武力行使の側にそれなりの説得力があった場合、反戦運動は盛り上がらない」

 「ソ連軍の中距離弾道弾IRBM SS-20 SABERセイバー は、悪魔の兵器と恐れられていた・・・」

 「・・・・・。(言うと思った)」

 「あっれぇ〜、こういうのはお約束なんだから、上手く突っ込んでよ〜」

 「ふむ。ソ連軍のほうもパーシングUを相当恐れていたから、おあいこだとは思うけれどね。

お互いに警戒するあまり、米ソは話し合い、中距離核戦力を廃棄する事になる。これがINF条約だ」

 「あぁ、ネタにマジレスされちゃった・・・」

 「私はいつでも本気だよ

 「・・・・・。(すると冒頭の漫才も本気だと?)」

 「ドイツの軍縮と派兵に付いては、大体説明できたかな。お次はドイツの徴兵制事情だ。

冷戦後、ヨーロッパ各国は次々に徴兵制を止める決定を下していった。イギリス、フランス、スペイン、オランダは既に志願制に移行。イタリアも2005年度中に完全に切り替る。

ヨーロッパの主要国は軒並み廃止の方向だね。もちろん、ドイツもその機運が高まっている」

 「けれど、徴兵制廃止はまだ決まっていない・・・何故かしら? イタリアまで廃止しちゃうっていうのに」

 「その点は大きく分けて二つの理由がある。

一つ目は、軍隊を職業軍人達だけに任せたら勝手に戦争を始めてしまうのではないかという懸念が一部にある事。

二つ目は、良心的兵役拒否制度で調達できる福祉の人員が確保できなくなるから、これをどうするのか。

・・・一つ目の懸念は杞憂だと思うよ。仮に徴兵が居ても軍部の暴走を食い止める役にはならない事は歴史が証明している。徴兵は高い役職には付かないしね。

むしろ為政者は、軍事訓練を受けた市民が武装蜂起する事を恐れているくらいだ」

 「良心的兵役拒否制度とは・・・・・兵役を拒否する代わりにボランティアに従事してもらう制度です」

 「これはこれで良い制度なんだけど、逆にいえばこの制度がある時点で徴兵制度は半分以上消えてしまったのも同然よね。

そしてその制度が徴兵制を廃止する障害になっているのは、本末転倒よ。兵役を拒否できる制度が兵役を無くすための阻害になるだなんて」

 「軍事と福祉は本来、直接の関係があるわけではないですから・・・これを理由にいつまでも徴兵制を残す事にはならないでしょうね」

 「私はそもそも、強制させて行うボランティアという発想が理解できないね。罰掃除とかならともかく・・・

あぁ、そうだ。ボランティアの語源は知っているかね? 実は義勇兵なのだよ」

 「エェッ?」

 「・・・・・ボランティアはラテン語の[ボランタール]が語源なのですが、意味は[義勇兵、志願兵]なんですよ」

 「強制される義勇兵・・・まさしく、朝鮮戦争での中国義勇兵を思い起こさせるよ」










 「わたしが新任の心男ハートマン軍曹である。 話しかけられたとき以外は口を開くな。 口でクソたれる前に“同志サー”と言え。 分かったか、ウジ虫ども!?」

 「是! 同志軍曹 (イエッサー、軍曹殿)

 「よし、ところで貴様らクソを垂れたくないか? きっとクソを垂れたいだろう、ケツの穴が緩んでいる頃だ」

 「是! 同志軍曹。我想去厠所! (イエッサー軍曹殿。トイレに行きたいであります)

 「なら身支度を整えて表に集合しろ!! ケツの穴を引き締めろ! ダイヤのクソをひねり出せ! さもないとクソ地獄だ! 」

 「啊? 整理打扮? (え?なんで身支度を?)

 「ふざけるな! 貴様、クソを垂れたいと言っただろう? だから便所に連れて行ってやる。

貴様らが普段から便所と呼んでいる場所、朝鮮半島だ。分かったか、お嬢さん?

分かったら早く準備しろ!朝鮮に行く前に戦争が終わっちまうぞ、アホ!」

 「哎呀アイヤー

 「ふざけるな!大声出せ!タマ落としたか!豚娘は解放軍を愛しているか?」

 「一生忠!生涯忠誠! 挂上生命!命懸けて! 工和!ガンホー! 工和!ガンホー! 工和!ガンホー!

 「ただし! 今回は人民解放軍としてではなく、義勇兵として死ね!

だが貴様らと解放軍は兄弟の絆に結ばれている。

貴様らのくたばるその日までどこにいようと解放軍は貴様らの兄弟だ。 

多くは朝鮮へ向かう。

ある者は二度と戻らない。

だが肝に銘じておけ。

解放軍は死ぬ。

死ぬために我々は存在する。

だが解放軍は永遠である。

つまり―――貴様らも永遠である!」







 「・・・なんとも悲しいお話だね」

 「ど〜見ても漫才にしか見えないわよ、ソレ」

 「とはいえ・・・・・朝鮮戦争に参加した中国人の義勇兵が、強制的に送りこまれて来た人民解放軍の兵士達であることは歴史の事実です。

それはアメリカとの全面戦争を避ける為の名目に過ぎなかったのですが・・・・・しかし、何百万人と送りこんできて義勇兵ボランティアというのも・・・・・」

 「ドイツの、徴兵の代わりに行う使役をボランティアと称するのは・・・ある意味ブラックジョークのようです」

 「そんな具合で、ドイツの徴兵制も廃止されようとしている。

これからNATO域外派兵が多くなるので、即応性に優れた職業軍人によって連邦軍ブンデスヴェーアを固めようという論議が活発だ。

これから彼らが必要とする軍隊に、徴兵は必要が無い」

 「・・・・・それでは、次の授業は『何故、現代の戦場に徴兵は必要無いのか』というテーマになると思います」








次の授業へ



ホームルームへ戻る





【補習授業シリーズ】     【正面玄関】