徴兵制 復活?−番外編4・カンボジアの徴兵制−

「背徳の魔都・・・ラストパラダイス・プノンペン」
「さ〜て、今回はパート2でやったマレーシアの徴兵制の続きみたいなものになるわけだけど・・・」
「それはよいのですがイリヤ、まだタイガが来ていないようですが?」
「なんだか資料集めで忙しいからって遅れるみたいよ? ま、先に始めちゃいましょ」
「では問題の件ですが・・・これですね。
■カンボジア国民:再び徴兵義務が始まる 2004/09/04 ラスメイカンプチア新聞
カンボジアは1993年に廃止した徴兵制を復活させる法案を閣議決定し、近く下院に送ることとなったわけです」
「や〜ヤレヤレ、遅れちゃった。アレッ、もう始めてるの?」
「おそ〜い!!
ところでタイガ、今度のカンボジアの件はマレーシアの時と似たような物なの?
これでASEAN諸国は全て徴兵制を敷く事になるんだけど、ASEAN同士で戦争、ないしインドや中国が侵略してくる危険性が差し迫っているとは思えないわ」
「それにおかしいんですよね・・・カンボジア軍は兵員数を削減していた筈です」
カンボジア軍
国軍:約13万人(兵員削滅計画による登録作業結果)
97年の武力衝突以降一時分裂していたラナリット派軍も王国軍に統合。フン・セン首相は、99年1月、軍の中立化のため最高司令官の地位を参謀総長に譲位。兵員削減計画により2002年までに余剰人員約3万1,500名を削減し、近代的軍組織としての再構築を企図。
「徴兵制を採用して、兵員数を増やすような国防上の大転換を必要とする情勢は、今現在のインドシナ半島には見えて来ない」
「ええ、現在のインドシナ半島は差し迫った危機がある状態に無いわ。
そしてカンボジア軍は徴兵制を採用しても軍の数を減らす方針に変わりは無いの。こんどの徴兵制復活は完全に内政的な問題なの」
「エッ、軍隊はそのまま減らす予定なのに徴兵制復活? 何の為にそんな事するのよ」
「やはりマレーシアの時と同様に、軍事教練はしない名ばかりの徴兵制なんですか?」
「いえ、今回のカンボジアの場合は普通に徴兵して軍事教練をします。
けれど軍事力拡大の為ではなく、意味合いとしては・・・本編2時間目で紹介した中米での軍隊廃止に近いわ」
「・・・中米での軍隊廃止の目的って、軍隊の中の人を入れ替えて政府に都合のよい“新しい軍隊(○○隊、と呼ばれる)”を造ることじゃない。
今度のカンボジアは徴兵制を採用して、尚且つ軍隊を減らして・・・アッ!!」
「フフフ、気付いた? つまりはそういう事なのよ」
「??? ど〜ゆ〜事なのです?」
「カンボジア政府の目論みは、実質上、軍隊を解体する気ね?
中の人を大幅に入れ替える気だわ。徴兵制を採用したのに軍の数を減らしていくなら、職業軍人は殆どクビにしなければならない」
「ご名答。
カンボジアは軍拡をするつもりなんて無く、愛国心を醸成する為に徴兵制を採用するのでもなく・・・
ただ内部の膿を出す為に徴兵制を採用します。その意味で中米での幾つかの国が行った”軍隊廃止”と目的は同じなのよ」
「・・・考えたものね。いきなり軍隊を解散して一斉にクビにしたら暴動・反乱が起きかねないから、時間を掛けて追い出したい。内戦は終結しているのだから急ぐ必要は無い。
そこで徴兵制を採用して職業軍人の比率を下げて、中の人を入れ替えていく・・・」
「ええ、そして軍内部を浄化できたらあっさり志願制に戻す予定なんじゃない?」
「そこまで荒療治をしないといけないなんて・・・カンボジア軍はそんなに腐敗しているのですか」
「ええ、軍人が麻薬を横流ししていたりね。
今まで長い内戦をやっていて、ポルポトによる大量殺戮もあったものだから産業基盤も破壊し尽くされて、軍隊くらいしか就職先が無かったものだから色々な利権も集中してしまったの。
知ってる? 志願制時代のカンボジア軍では軍人になるのにお金が要るのよ。昇進するのもお金が必要。そして軍は兵員数を削減しているのでこう言うの。
『軍隊に留まりたいならお金を払え。払えない奴はクビだ』
お金持ちが軍隊に入りたがり、お金持ちじゃないと追い出されるという、世にも奇妙なカンボジア軍。皆、利権目当てだったのね」
「ワケわかんない状態ね〜」
「しかし一兵卒ではさすがに利権は回ってこないから、貧乏人は兵隊になっても意味が無い。お金を払って軍隊に入って、お金を払って昇進して初めて旨みにありつける。一度旨みにありついたら、もう辞め様としない・・・でも政府は軍縮して定数を削減する方針だったから、トンでもないことになっちゃったわ。
軍隊内に高級軍人だけが残ってしまったわけで、下士官も兵もいなくなっちゃたの。志願制軍隊なら士官の比率が多くなるのは当然だけど、カンボジアの場合はあまりにも無茶苦茶な比率になっちゃった」
「そんな軍隊、まともに機能しません! 何を考えているんですか、一体」
「普通、有り得ないでしょうね・・・カンボジア、迷走し過ぎ」
「まぁそんな訳で、カンボジアが徴兵制を採用する真の目的は“汚職軍人の追放”であって実質上の軍解体→再生計画なのでした。
だからこの事例を他国に当て嵌めようとするのはちょっと無理ね・・・
ということで、今回はこれくらいで終わりにしたいと思います。次回はアメリカの徴兵制の歴史を講義する予定・・・なんだけど、資料が全然集まらないので何時になるやらさっぱりわかりません。じゃ〜ね〜♪」